不動産における収益還元法とは 2つの計算式を解説

2023.12.27不動産クラウドファンディング

収益還元法とは

不動産における収益還元法とは、その不動産が生み出す収益から不動産価格を算出する方法です。

不動産鑑定士による鑑定評価方法の一つでもあります。

収益還元法の特徴

収益還元法の特徴は、不動産の収益性に着目した評価ができる点にあり、賃貸用不動産や事業に使用される不動産の価格を求める際に有効です。

例えば「賃貸している不動産を売却したいけれど、市場価値がわからない」といった場合などに活用できます。

不動産の取引価格はその時点の市況の影響を受けます。不動産価格が上昇傾向にある局面で売買をする場合に、その取引価格が本来の収益力に見合うものかどうかを判断する材料にもなります。

指定文化財など市場性のない不動産に収益還元法を使うことは不向きです。

収益還元法の2つの計算方法

収益還元法の計算方法には、直接還元法とDCF法の2種類があります。

この記事では、国土交通省が定める「不動産評価鑑定基準」(平成26年5月改訂)を参考に、収益還元法における直接還元法とDCF法の計算方法を紹介します。

参考:国土交通省HP:不動産鑑定評価基準等

直接還元法とは

直接還元法とは、その不動産から生じる純利益を還元利回りで割り戻す方法です。

使用する純収益(総収益-総費用)は、「一期間」のものとなります。ここでいう「一期間」とは、一般的に1年間のことです。

DCF法とは

DCF法のDCFとは、「Discounted Cash Flow」の略です。

不動産から生じる運用期間の純収益の現在価値の総和と、運用期間満了時(物件売却時)に得られる対象不動産の価格(復帰価格)の現在価値の合計から計算する方法になります。

直接還元法とDCF法の違い

直接還元法とDCF法の大きな違いは、不動産価格の計算に用いる純収益の期間にあります。

直接還元法の場合、計算に用いる純収益は「一期間」のものですが、これに対してDCF法は、「連続する複数の期間」の純収益を用いて計算します。

DCF法では計算に使用した期間ごとの純収益の予測金額が明らかになるため、説明性に優れた方法であるとされています。

ただし、DCF法を常に選んだほうがいいというものではなく、収集できる資料の範囲など状況にあわせて選択すべきものとなります。

収益還元法(直接還元法)の計算方法

直接還元法の計算式と、具体的な計算例を解説します。

直接還元法の計算式

不動産価格=一期間の純収益÷還元利回り

直接還元法の計算例

・純収益:1,000万円

・還元利回り:4%

【計算式】

1,000万円÷4%=2億5,000万円

純収益とは

純収益とは、総収益から総費用を差し引いた金額です。

例えば、1年間の家賃収入が1,500万円であり、それに対する1年間の費用が500万円であれば、総収益は1,000万円になります。

直接還元法における純収益は、その不動産の初年度の純収益を採用する場合もあれば、標準化された純収益を用いて計算することもあります。

また、近隣地域などの類似する不動産の純収益から間接的に計算する場合もあります。

なお、建物の減価償却費を総費用に含めるかどうかについては、基本的には含めないとされています。その場合は、次項の還元利回りについても減価償却費を含めていないものを用いる必要があります。

還元利回りとは

還元利回りとは、一期間の純収益から不動産の価格を割り戻す際に用いられる、不動産の利回りのことをいいます。

計算方法は複数あり、類似する不動産の取引事例の利回りから求める方法、借入金と自己資金の各還元利回りをその構成割合で加重平均して求める方法、土地と建物の各還元利回りをその構成割合で加重平均して求める方法などがあります。

収益還元法(DCF法)の計算方法

DCF法の計算式と、具体的な計算例を解説します。

DCF法の計算式

不動産価格=連続する各期間の純収益の現在価値の総和+不動産の復帰価格の現在価値

連続する各期間の純収益の現在価値の総和の計算式

不動産の運用期間(売却を想定しない場合は分析期間)がn年である場合、連続する各期間の純収益の現在価値の総和は、下記の合計額になります。

・純収益 ÷ (1+割引率)

・純収益 ÷ (1+割引率)^2

・純収益 ÷ (1+割引率)^3

・純収益 ÷ (1+割引率)^n(n年目)

不動産の復帰価格の現在価値の計算式

復帰価格とは、運用期間(または分析期間)の満了時(n+1年目)における不動産の価値のことであり、それを現在価値に割り引いて求めます。

計算式は、下記になります。

 

(A/B)÷(1+割引率)^n

 

A:n+1年目の純収益

B:期間満了時における還元利回り(最終還元利回り)

 

DCF法の計算例

・各年の純収益:1,000万円

・期間:5年

・割引率:5%

・最終還元利回り:4%

→不動産価格:約2億3,917万円

 

【計算方法】

  年数 計算式 現在価値
連続する各期間の純収益の現在価値の総和 1年目 1,000万円÷1.05 9,523,809 
2年目 1,000万円÷1.05^2 9,070,294 
3年目 1,000万円÷1.05^3 8,638,375 
4年目 1,000万円÷1.05^4 8,227,024 
5年目 1,000万円÷1.05^5 7,835,261 
復帰価格 (1,000万円/0.04)÷1.05^5 195,881,542 
合計 239,176,305 

 

純収益とは

純収益とは、総収益から総費用を差し引いた金額です。

前項の「直接還元法」を参照してください。

割引率とは

将来の収益を現在価値に割り戻す際に使用される率のことです。

類似する不動産の取引事例から求める方法、借入金と自己資金の各還元利回りをその構成割合で加重平均して求める方法、債券等(10年物国債の利回りなど)の金融資産の利回りにその不動産のリスクなどを加味して求める方法などがあります。

最終還元利回りとは

保有期間(または分析期間)の満了時における「還元利回り」のことです。

「還元利回り」については前項の「直接還元法」を参照してください。

収益還元法以外の評価方法

収益還元法と原価法(積算法)の違い

原価法(積算法)とは、不動産の再調達原価から不動産価格を求める方法です。

収益還元法がその不動産の「稼ぐ力」に着目して価格を求める方法であることに対し、原価法(積算法)では材料費や労務費といった「製造原価」に着目し、「今それを作り直したらいくらかかるか」という観点から価格を求める方法になります。

原価法は、建設資材や工法などから求めた原価に減価修正を行って求めることから、これらを適切に把握できる場合に有効となります。

収益還元法と取引事例比較法の違い

取引事例比較法とは、他の取引事例における取引価格に対して必要な補正を行い、不動産の価格を求める手法です。

収益還元法がその収益性から不動産価格にアプローチする方法であることに対し、取引事例比較法では複数の取引事例から求められた取引価格の指標からアプローチする方法になります。

近隣地域や類似する地域における取引事例を豊富に収集できることが条件となります。

税務上の評価方法との違い

収益還元法、原価法、取引事例比較法はいずれも、不動産の価格を求める計算方法です。

これに対し、不動産の評価方法には、他にも固定資産税評価額や相続税評価額といった評価額があります。

これらは文字どおり、固定資産税や相続税を計算するための税法上の評価額であり、不動産の取引価格とは別物になります。

まとめ

収益還元法とは何か、直接還元法とDCF法によるそれぞれの計算式や計算例、収益還元法と他の評価方法の違いについて解説しました。

収益還元法は、賃貸不動産など収益性のある物件の取引価格の参考にできる価格ですので、取引の予定があるときは上手に活用しましょう。

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