配当控除とは何か 計算方法や適用するデメリットを解説
2024.02.26不動産クラウドファンディング配当控除とは
配当控除とは、所得税の計算における税額控除の1つです。
「配当所得」のある人が、確定申告で総合課税を適用した場合にのみ適用できる控除になります。
そもそも「配当所得」とは
配当所得とは、株式や投資信託からの配当金や分配金のことです。
もし株式などを取得するために借り入れをしていれば、その借入金の利子のみ、各銘柄の経費として差し引くことができます。
【配当所得の計算式】
配当所得=源泉徴収前の配当金の収入金額-株式などを取得するための借入金の利子
所得控除と税額控除の違い
「税額控除」とは、所得から所得控除を差し引いた後の金額(課税所得金額)に所得税率をかけて計算したその年の所得税額からの控除です。
「所得控除」とは違って税額からの控除であるため、たとえ少額でもそのまま減税になることから減税効果が高いといえます。
配当控除は「税額控除」に該当します。
(参考)所得税の計算式
(合計所得金額−所得控除)×所得税率-税額控除
配当控除の趣旨
配当金は、法人などからの利益の分配金です。
すでに法人税等の税金が課税された後の金額が分配されているものになります。
その配当にさらに個人の税をかけると二重課税になってしまうため、それを防止するために配当控除が設けられています。
配当控除の対象になる配当・ならない配当
配当控除の対象になる配当
日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配などが対象です。
配当控除の対象にならない配当
外国法人からの配当金は、配当控除の対象となりません
また、配当金のうち、総合課税を選択していないもの(確定申告不要制度や申告分離課税を選択した配当)も対象外です。
その他、配当控除の対象にならないものは、下記のとおりです。
・基金利息
・私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等
・国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
・外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等
・特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等
・適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等
・特定目的信託から支払を受けるべき配当等
・特定目的会社から支払を受けるべき配当等
・投資法人から支払を受けるべき配当等
配当控除の計算方法
配当控除の計算方法は、原則的には株式などの配当であれば配当所得の10%、投資信託の分配金であれば配当所得の5%になります。
ただし、配当所得を含めたその年の「課税総所得金額等」が1,000万円を超える人の場合、配当所得のうち1,000万円を超過する部分から計算される配当控除は、通常の半分の控除率が適用されます。
また、この超過部分は「投資信託からの分配金による配当所得」と、「剰余金の配当(株式などの配当)による配当所得」に分けて考える必要があります。
以下、1,000万円を超える人・超えない人に分けて計算方法を解説します。
(出典)国税庁HP: 配当所得があるとき(配当控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
配当控除の計算方法(課税総所得金額等が1,000万円以下の場合)
・【パターン1】
配当所得を含めたその年の課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、下記のようになります。
配当控除の額=A+B
A:剰余金の配当にかかる配当所得の金額×10%
B:投資信託の分配金にかかる配当所得の金額×5%
配当控除の計算方法(課税総所得金額等が1,000万円を超える場合)
・【パターン2】
配当所得を含めたその年の課税総所得金額等は1,000万円を超えるものの、そこから投資信託にかかる配当所得のみを減額してみると1,000万円以下になる場合、下記のようになります。
配当控除の額=A+B+C
A:剰余金の配当にかかる配当所得の金額×10%
B:投資信託の分配金にかかる配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1,000万円を差し引いた金額に相当する部分×2.5%
C:投資信託の分配金にかかる配当所得の金額のうち、Bを超える部分×5%
Bは投資信託の分配金の1,000万円超過部分、Cは投資信託の分配金の1,000万円以下部分をそれぞれ意味しています。
・【パターン3】
配当所得を含めたその年の課税総所得金額等は1,000万円を超えており、そこから投資信託にかかる配当所得のみを減額しても1,000万円を超えるものの、そこから株式などの配当にかかる配当所得を減額すると1,000万円以下になる場合、下記のようになります。
配当控除の額=A+B+C
A:剰余金の配当にかかる配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1,000万円と投資信託の配当所得を差し引いた金額×5%
B:剰余金の配当にかかる配当所得の金額のうち、前記Aを超える部分×10%
C:投資信託の分配金にかかる配当所得の金額×2.5%
Aは株式などの配当金の1,000万円超過部分、Bは株式などの配当金の1,000万円以下部分、Cは投資信託の分配金の1,000万円超過部分をそれぞれ意味しています。
【パターン4】
配当所得を含めたその年の課税総所得金額等は1,000万円を超えており、そこからすべての配当所得を減額しても1,000万円を超える場合、下記のようになります。
配当控除の額=A+B
A:剰余金の配当にかかる配当所得の金額×5%
B:投資信託の分配金にかかる配当所得の金額×2.5%
配当控除のデメリット
配当控除は、すべての人にとって得になる控除ではありません。
配当控除を適用するデメリットを見ていきましょう。
税金がかえって増える場合がある
多くの人が受け取る身近な配当金といえば、証券口座を通じて投資した、上場株や上場投資信託などからの配当金・分配金であることでしょう。
これらからの配当金(大口株主を除く)に対する所得税・住民税の税金の計算方法は、次の3つから選択することができます。
・総合課税
給与や自営業の所得などと合算して、5.105%~45.945%の所得税と10%の住民税が適用される方法です。
・申告分離課税
他の所得と分離し、上場株式等の配当のみの合計に15.315%の所得税と5%の住民税が適用される方法です。
この方法を選択するときは、確定申告をする上場株式等の配当所得の全てにこの方法を適用します。
・申告不要制度
上場株式等の配当所得は、証券口座の種類によって支払われるときに20.315%の税金(申告分離課税と同じ税金)が源泉徴収されます。
この方法では、それをそのまま確定申告をしないというものです。
(画像出典)国税庁HP:上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度
配当控除を適用できるのは総合課税を選択した場合のみです。
しかし、総合課税を選択すれば約15%~55%の税率が適用され、所得の高い者ほど不利になります。
これに対して、総合課税以外を選択すれば、配当金にかかる税金は約20%で済みます。
そのため、給与や個人事業など総合課税の対象になる所得が多い人の場合、総合課税を選択しない(=配当控除を適用しない)ほうが、税負担が小さくなることがあります。
ただし、次項の要素などもあるため、所得金額だけで判定が難しいところではあります。
所得金額で判定する各種制度で不利になる
税や社会保険などさまざまな制度において、所得が低いほうが有利になるものがあります。
総合課税を選択すると、配当所得がこれらの所得に加わってしまうため、あえて申告不要制度を選択したほうが得になる場合があります。
所得が低いほうが有利になりやすいものには、例えば、国民健康保険料の計算や、所得税等における各種控除(配偶者控除、扶養控除など)の適用判定があります。
TECROWD運営事務局
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