不動産投資の減価償却とは? 仕組みとメリット・注意点を解説

2024.01.22不動産クラウドファンディング

不動産投資の減価償却とは?

減価償却とは償却資産の取得費用を一括で費用計上せず、何年かに分けて計上する会計上の処理のことです。

たとえば、年間の利益が1,000万円の会社が、2,000万円の機械設備を取得したとします。取得費用の全額を購入した年に計上すると、その年は1,000万円の赤字となります。

しかし、実際には機械設備は使用可能な期間を通じて、会社の利益に貢献し続けるものです。かけた費用と利益の関係を適切に把握するには、使用期間で分割して費用計上したほうが合理的といえます。このような考えに基づき、長期間使用できる高額な資産を毎年一定額ずつ経費計上していくのが減価償却です。

不動産で減価償却の対象となるのは建物と建物付属設備で、土地は対象とはなりません。不動産投資において減価償却は、節税やキャッシュフローの増加に役立ちます。

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。2007年4月1日以降に取得した建物と、2016年4月1日以降に取得した建物付属設備の計算方法は、定額法に限られます。

参照:減価償却のあらまし|国税庁

<h3>定額法

定額法は減価償却の期間中、毎年同額の減価償却費を計上する方法です。計算式は、以下のとおりです。

 

減価償却費=取得価格×耐用年数に応じた償却率

 

償却資産の耐用年数と償却率は、それぞれ以下の資料で確認できます。

 

新築の建物価格が3,000万円の鉄筋コンクリート造の居住用マンションを2023年に取得したとします。この場合、耐用年数は47年で、減価償却率は0.022です。

 

減価償却費 = 3,000万円 × 減価償却率0.022 = 66万円

 

このマンションでは、毎年66万円を減価償却費として経費計上できます。

参照:定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

<h3>定率法

定率法は未償却残高に償却率をかけて計算する方法で、未償却残高とは取得費からそれまで減価償却した額を差し引いた額のことです。

計算式は以下のとおりです。

 

減価償却費 =(取得価格-前年度までの減価償却累計額)×償却率

 

減価償却期間と耐用年数

減価償却期間は、建物の構造・用途と法定耐用年数によって決まります。新築の場合、法定耐用年数が減価償却期間になります。

住宅用の建物の法定耐用年数は、以下のとおりです。

構造 耐用年数
木造 22年
木造モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年
鉄骨造 骨格材の肉厚が

4mm超:34年

3mm超4mm以下:27年

3mm以下:19年

出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表より筆者作成

中古物件の場合

中古物件の減価償却期間には、「簡便法」という計算方法が認められています。簡便法による減価償却期間の算定方法は、法定耐用年数を超えているか否かで以下のように分かれます。

  • 法定耐用年数を超えている場合:減価償却期間 = 法定耐用年数 × 20%
  • 法定耐用年数を超えていない場合:減価償却期間 = (法定耐用年数 - 経過年数)+ 経過年数 × 20%

算出された減価償却期間の1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合には2年とします。

たとえば、築25年の木造住宅の減価償却期間は、4年(22年×20%)です。また、築30年の鉄筋コンクリート造の住宅の減価償却期間は、23年((47年-30年)+(30年×20%))となります。

参照:中古資産の耐用年数|国税庁

不動産投資における減価償却のメリット

不動産投資において減価償却をとりこむことで、節税につながるメリットがあります。減価償却による税負担の軽減について解説します。

実際の支出がないのに経費として計上できる

減価償却費は実際の支出を伴わない、帳簿上の経費です。経費が多いと利益が減り、かかる税金を抑えられます。しかし、物品購入のような通常の経費には支出が伴うため、利益が減ると手元の資金も減ります。減価償却は資金を減らさず利益を減らし、かかる税額を抑えられるのです。

損益通算で節税できる

不動産投資では減価償却によって赤字が生じると、損益通算を活用できます。損益通算とは、赤字の所得と他の黒字所得を相殺することです。不動産所得の赤字は、給与所得や事業所得の黒字と損益通算できます。

不動産所得とは、家賃収入から固定資産税や火災保険料などの必要経費を差し引いて求めます。

たとえば、給与所得が600万円の会社員が賃貸アパートを購入し、不動産所得が100万円の赤字の場合、課税所得は500万円です。減価償却費を多く計上できるほど所得が少なくなり、節税効果を見込めます。

減価償却の注意点

減価償却は節税効果を期待できますが、注意点もあります。

節税効果がずっと続くわけではない

減価償却による節税効果は、減価償却期間が終われば得られなくなります。築古の物件を選ぶことで減価償却期間は短くなり、1年あたりの減価償却費が多くなります。しかし、減価償却期間が終わると、以降は減価償却費を計上できません。課税所得が増え、税額も大きくなる点に注意しましょう。

売却時の譲渡所得税が大きくなる場合がある

減価償却費を多く計上した物件を売却する場合、譲渡所得税が大きくなる可能性があります。減価償却をするごとに建物の簿価(会計上の価額)が減っていきます。建物を売却した際の売却益は売却価格と取得価格の差額ではなく、売却価格と簿価との差額である点に注意が必要です。

たとえば、3,000万円で取得した建物を2,000万円で売却したとします。売却時までに計上した減価償却費が1,500万円あれば簿価は1,500万円となり、売却によって500万円の利益が出ることになるのです。減価償却終了後の簿価は1円となり、売却価格のほぼ全額が売却益となります。

減価償却の節税効果を得るポイント

以上の内容を踏まえ、減価償却で節税効果を得るポイントを確認しましょう。

減価償却期間が短いほうが有利

物件価格、築年数が同じ物件の場合、減価償却期間が短いほうが1年あたりの減価償却費を大きくできます。減価償却期間が短くなるポイントは建物の構造と築年数です。

法定耐用年数は建物の構造によって決まり、鉄筋コンクリート造は47年、木造は22年と大きな違いがあります。法定耐用年数の短い木造のほうが、1年あたりの償却金額が大きくなるのです。

また、同じ構造でも築年数が古い物件のほうが、償却期間は短くなります。最も償却期間が短くなるのは、法定耐用年数を超えた物件です。

これらの条件から、法定耐用年数を超えた木造住宅の減価償却期間が短く、節税効果が高いことがわかります。先述のとおり、法定耐用年数を超えた木造の住宅では償却期間が4年と、新築に比べてずっと短い期間での減価償却が可能です。

売却するなら所有期間5年超で

最終的に物件を売却するなら、所有期間が5年を超えてからにしましょう。譲渡所得にかかる税率は所有期間が5年以内(短期譲渡所得)と5年超(長期譲渡所得)で異なり、短期譲渡の税率は長期譲渡の2倍近くであるためです。

所有期間は、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるか否かで判定します。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の所得税・住民税・復興特別所得税の税率の合計は、以下のとおりです。

  • 長期譲渡所得:20.32%
  • 短期譲渡所得:39.63%

たとえば、売却益が500万円の場合、長期譲渡所得に該当すると税額の合計は101万6,000円ですが、短期譲渡所得では198万1,500円となります。減価償却期間が終わって売却を考える場合、いつから長期譲渡所得になるのかを把握するようにしましょう。

参照:長期譲渡所得の税額の計算|国税庁

参照:短期譲渡所得の税額の計算|国税庁

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