サラリーマンの不動産投資が節税になる理由と注意点
2024.02.26不動産クラウドファンディングサラリーマンの不動産投資は節税になる
不動産投資が所得税・住民税の節税になる理由
インカムゲイン型の不動産投資をすると、不動産のオーナーには賃貸収入が入ります。
この賃貸収入から必要経費を差し引いた残りの額が「不動産所得」となり、サラリーマンの給与やボーナスから計算される「給与所得」と合算されて、その年の所得税や住民税の課税対象になります。
普通に考えると、不動産投資を始めると所得が増えるため、毎年の納税額も大きくなるはずです。
ところが、この「不動産所得」をはじめとする一部の所得では、賃貸収入よりも経費の額のほうが大きい場合、「マイナス」が認識されて他の所得と相殺できるという仕組みがあります。
これを「損益通算」といいます。
不動産所得がマイナスになる理由
投資の成果がマイナスになるというのは投資家としては避けたい事態ですが、不動産投資においては、経営が順調であっても収支がマイナスになることがあります。
不動産投資では建物の減価償却費が経費になるからです。
減価償却とは、建物の取得価額をその耐用年数にしたがって少しずつ経費にする会計処理のことをいいます。
新築の場合は耐用年数が長いためそれほど大きな費用にはなりませんが、中古不動産の場合は、耐用年数を短く計算できるため、1年あたりの減価償却費がかなりの額になります。
例えば、築12年の木造アパート(建物6,000万円、土地4,000万円)で減価償却費を計算してみましょう。
【計算例】
耐用年数:12年((22年-12年)×1.2)
年間減価償却費:500万円(6,000万円÷12年)
サラリーマンの節税額のシミュレーション
それでは、年収2,000万円のサラリーマンが1億円の不動産投資をした場合で節税額をシミュレーションしてみましょう(以下はあくまでもシミュレーションであり、個別の状況により納税額は異なることがあります)。
まずは、不動産投資をする前の税金を計算します。
【給与の状況】
・サラリーマンの年収:2,000万円(給与所得1,805万円)
・課税所得金額:1,587万円(所得控除後の金額(※))
・不動産投資をする前の所得税・住民税:約537万円
(※)所得控除は、最低限の控除として基礎控除と自身の社会保険料控除(協会けんぽ・年金)のみを考慮しています。
【不動産投資の内容】
・購入物件:築12年の木造アパート(建物6,000万円、土地4,000万円)
・家賃年入:500万円
・必要経費等:900万円(減価償却費:500万円、その他の経費:400万円)
→不動産所得はマイナス400万円になります。
【節税額の計算】
・課税所得金額:1,187万円
・不動産投資をした後の所得税・住民税:約360万円
→不動産投資によって所得税・住民税は約175万円の節税になります。
サラリーマンの不動産投資は相続税の節税にもなる
不動産の相続税評価額は、取引価格よりも低くなることが一般的です。
相続の時に賃貸していれば、取引価格の半分程度で相続税を計算できるようになるケースもあります。
そのため、不動産投資をすることは、お子さんなどが将来負担することになる相続税の節税にも有効です。
不動産投資が相続税の節税になるしくみ
不動産の相続税評価は、土地と建物で別々に行います。
どちらの評価額の計算においても、購入額と同じ額の現金預金を保有している場合より節税に有利になります。
【土地の節税ポイント】
・路線価が公示価格の80%程度を目安に設定されている
・相続時に建物を賃貸している場合、その敷地は「貸家建付地」として満室状態であれば上記の評価額からさらに9%~27%を減額できる
・小規模宅地等の特例でさらに最大50%を減額できる可能性がある(最大200㎡)
【建物の節税ポイント】
・固定資産税評価額(再調達価格)により、一般的に取引価格の50~70%ほどになる
・相続時に賃貸している場合、「貸家」として、上記の評価額からさらに最大30%を減額できる。
【その他】
・不動産投資ローンの残りの債務を相続人が引き継ぐ場合、債務控除を適用できる
節税額のシミュレーション
総資産が現金2億円であるサラリーマンが1億円の不動産投資をする例で相続税を比較してみましょう。
法定相続人は配偶者・子1人(計2人)、不動産の相続税評価額は4割減の6,000万円とします。
【不動産投資の前】
・課税遺産総額:2億円-基礎控除4,200万円
・法定相続分:各7,900万円ずつ
・相続税の総額:3,340万円
【不動産投資の後】
・課税遺産総額:1.6億円-基礎控除4,200万円
・法定相続分:各5,900万円ずつ
・相続税の総額:2,140万円
→不動産投資によって相続税は約1,200万円の節税になります。
サラリーマンが不動産投資で節税するときの注意点
給与や資産の額が少ないと節税効果は低い
サラリーマンの不動産投資による節税効果は、サラリーマン本人の給与や資産の金額によって変わります。
理由は、所得税や相続税には超過累進課税のしくみがあるからです。
所得税の税率は5%~45%(住民税10%を合わせると15%~55%)、相続税の税率は10%~55%であり、所得税は課税所得の高い部分・相続税は法定相続分ごとの財産額の高い部分により高い税率が適用されます。
不動産投資による節税は、課税対象となる所得や財産額を圧縮する方法ですので、まったく同額の投資であっても、所得や財産に高い税率が適用される者が行ったほうが節税効果は高くなります。
言い換えると、給与や資産の金額がそれほど多くないサラリーマンが不動産投資を行っても、高い節税効果を得ることはできません。
税制改正で節税効果が得られなくなることも
せっかく節税効果をねらって不動産投資をはじめても、税制改正によって節税効果がなくなるリスクがあることを知っておかなければなりません。
不動産投資に関する近年の税制改正として、具体的には下記のようなものがあります。
・【所得税】国外中古建物の損益通算の特例の創設(2021年分~)
海外の中古不動産から生じた減価償却費を損益通算の対象外とした改正になります。
海外不動産は中古市場が活発であり使用可能年数も長いことから、減価償却費による節税効果が高かったのですが、過度な節税が目立ったため、改正によって封じられました。
・【相続税】小規模宅地等の特例の改正(2018年4月~)
小規模宅地等の特例の対象となる貸付事業用宅地等(200㎡まで50%減)の対象となる宅地から、「相続開始前3年以内」に新たに賃貸をはじめた宅地を除く改正が行われました。
相続直前に節税目的での駆け込み投資が目立ったため、「3年」でラインを引いて減額の対象外とした改正です。例外となるケースもあります。
・【相続税】タワマン税制の見直し(2024年1月~)
市場価格と相続税評価額が乖離しやすいタワーマンションの投資に対し、2022年4月の最高裁判決を受けて、マンションの相続税評価のための通達が見直されました。
評価乖離率という新しい指標を用いて、総階数・所在階が高い建物などの相続税評価額を市場価格に近付けることで、過度な節税ができないようにしています。
こうした改正については内容も大切なのですが、改正のタイミングにも注目しましょう。
おおむね「〇年分からの所得税の計算から」とか「〇年以降に発生した相続から」というような方法で改正されており、いつ不動産を買ったかは関係がありません。
つまり、不動産を買った時に合法だった節税スキームが買った後に使えなくなることがあるということです。
まとめ 節税に頼らない不動産投資を
サラリーマンの節税策として不動産投資は有効です。
しかし、節税効果に頼って投資をしても、節税効果を十分に受けられるサラリーマンは限られますし、そもそも節税スキーム自体が封じられるリスクもあります。
不動産投資は、利回りや物件の良さといった不動産本来の良し悪しで投資を判断することが王道であり、安定した収益を得るコツです。
TECROWD運営事務局
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