不動産投資における表面利回りと実質利回りの違いと注意点

2023.08.23不動産クラウドファンディング

不動産投資で物件選びをする際は、その利回りを重視するのが一般的です。

利回りとは、購入価格に対して、物件を1年間運営した場合にどれだけの収益を確保できるかの割合を示す数字です。

しかし、不動産投資における利回りには表面利回りと実質利回りという2つの利回りが存在し、その違いを理解しておくことは重要です。

この記事では、不動産投資の収益性を正しく評価するために必要な2つの利回りについて解説します。

表面(グロス)利回りとは

表面利回りとは、運営する不動産の賃料などの収入をその投資額で割ったものを百分率で表したものです。数式で表すと次のようになります。

賃料収入を満室想定で計算したものは、想定利回りとも呼ばれます。

表面利回り = (年間収入 ÷ 投資額) × 100

例えば1億円の物件で年間家賃収入が800万円の場合、表面利回りは8%となります。

不動産情報サイトなどに表記される利回りは、一般的にこの表面利回りです。表面利回りは収入と投資額だけで簡単に算出できるため、おおよその収益性をすばやく算出する際には効果的です。

実質(ネット)利回りとは

表面利回りに対して実質利回りとは、年間の収入から経費を差し引いて、手元にどれだけの金額が残るかを表す数字です。

不動産を運営するにはさまざまな経費がかかります。それらの経費を考慮した数字が実質利回りです。厳密に計算する場合は、物件購入時の諸経費も計算に含めます。

実質利回りは次のような数式で計算されます。

実質利回り = (年間の収入 ー 経費) ÷ 投資額 × 100

計算式自体は単純ですが、不動産運営には様々な経費がかかるため、その経費をすべて含めることでより正確な実質利回りを算出することができます。

不動産の購入と運営において発生する経費としては、主に以下のようなものが挙げられます。

不動産購入にかかる経費

・不動産取得税などの税金
・仲介手数料
・不動産登記にかかる費用
・融資を受ける際の手数料
・収入印紙代

不動産運営にかかる経費

・固定資産税、都市計画税などの税金
・管理費用
・維持・修繕費用
・公共料金
・保険料
・修繕積立金

表面利回りのみを考慮することのリスク

投資目的で不動産を購入する際、計算がシンプルであることから、表面利回りを根拠に物件探しをしてしまうことがあります。しかし、表面利回りのみを考慮して物件を購入してしまうと、後になってさまざまなリスクが生じる可能性があるため、実際の購入に際しては実質利回りを入念に検討する必要があります。

表面利回りのみを考慮することの主なリスクには次のようなものがあります。

想定より収入が少なくなりローン返済などに支障が出る

注意すべきは、表面利回りは優秀なのに、想定以上に経費がかかって実質利回りが低くなってしまう物件です。それにより月々のローン返済に支障が出る可能性もあります。

例えば、毎月の家賃収入が50万円、想定経費が20万円、ローンの返済が25万円だった場合は、収入50万円>支出45万円と収支が成立しています。しかし実際の経費が毎月30万円かかるとなると、収入50万円<支出55万円と収支は成立しなくなります。また、想定表面利回りのみを考慮して物件を選んでいる場合は、空室リスクを過小評価している可能性もあります。手元にお金が残っているうちは運営も成り立ちますが、空室の数・期間が長くなって収入が減ると、家賃収入をローン返済が上回ってしまうことにもなりかねません。

売却価格が下がる可能性も

思うように収益が上がらず、物件を売却して資産を整理することにした場合も、実質利回りが低い物件の場合、購入価格を大きく下回る金額でしか売れない可能性があります。

価格を下げて売却せざるを得ない状況に陥り、最悪の場合ローンの残債に対して物件の売却価格が下回ってしまって資産の整理が行えなくなることも考えられます。

表面利回りと実質利回りの乖離を小さくするには

では、表面利回りと実質利回りの差分を減らし、想定より収入が少なくなるケースを防ぐために、具体的にどのような点に注意して物件を選べば良いでしょう。

 イールドギャップを考慮してさらに正確な収益予測を

個人で行う不動産投資は金融機関からの借入を前提として行うことが一般的であるため、実質利回りと金利を含めた返済額の差=イールドギャップも考慮に入れる必要があります。

イールドギャップ = 実質利回り ー ローン定数 (1年間のローン返済額)

イールドギャップの適正な目安は1.5%~2%以上とされています。

返済期間など融資条件によっても数値が変動するため、表面利回りや実質利回りだけで判断をせず、投資を行う前には集められるだけの情報を集め、入念に収益予測を行うようにしましょう。

不動産投資型クラウドファンディングを利用する

実質利回りと表面利回りのギャップの少ない不動産投資ということであれば、不動産投資型のクラウドファンディングを利用するという方法もあります。

不動産投資型クラウドファンディングは、不動産プロジェクトのオーナーや運営会社が投資家から資金を集め、不動産事業を行い、得られた利益を出資額に応じて投資家に分配するというクラウドファンディングの一形態です。

不動産投資型クラウドファンディングであれば、投資家は自ら物件を運営・管理する必要がないため、不動産運営に関する経費は基本的にかかりません。

不動産投資型クラウドファンディングの一般的な利回りは3%から7%のものが多く、区分マンション投資とそれほど変わりません。その上経費がほぼなく、提示される利回りが実質利回りに等しい数字と言えます。

また、更に高い利回りを求めるのであれば、海外不動産を扱う不動産投資型クラウドファンディングを選ぶのもひとつの方法です。新興国であれば物件価格が安く、経済成長も期待できるため、利回りが10%前後のファンドもあります。

まとめ

不動産投資における表面利回りと実質利回りは、不動産の購入や運営にかかる経費を考慮するかしないかの違いになります。マンションなど運営のための管理費維持費がかかる物件は表面利回りと実質利回りのギャップが大きくなるので、物件運営のための経費がどの程度かかるのかを事前にしっかりと把握しましょう。思ったような収益があがらないだけでなく、ローン返済や売却時に支障が出る可能性もあります。金融機関からの借入を想定しているのであれば、そのローン定数も意識してイールドギャップを確保する必要があります。

表面利回りと実質利回りの差を小さくしたいのであれば不動産投資型クラウドファンディングを選ぶというのもひとつの方法です。不動産投資型クラウドファンディングは自身で物件の管理運営を行う必要がないため手間も経費もかからないというメリットがあります。

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タグ : 不動産投資 利回り
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