投資の利益はいくらから確定申告が必要? 税金がお得になる方法も解説
2023.11.13不動産クラウドファンディング投資と税の基本
最初に、投資に関係する税金や確定申告について解説します。
投資で利益を得たら確定申告が必要
投資で得た利益には基本的に税金がかかり、確定申告が必要です。税金がかかるのは投資による儲けの部分であり、収入金額から必要経費を差し引いた部分です。
所得税の課税方式には総合課税と分離課税があり、所得の種類によって適用される方式が異なります。総合課税とは、対象となるすべての所得の合計金額に対し課税する方法です。分離課税は総合課税とは別に、その所得について他の所得とは別に所得税や住民税を計算する方法です。
投資の利益と所得の区分
投資の利益は種類によって所得の区分や課税方式が異なります。たとえば、株式の売却益は譲渡所得、配当金は配当所得に該当します。主な利益の種類と、所得区分、課税方式は以下のとおりです。
利益の種類 | 所得区分 | 課税方式 |
株式・投資信託・債券の売却益 | 譲渡所得 | 申告分離課税 |
株式の配当金・投資信託の分配金 | 配当所得 | ・源泉分離課税 ・申告分離課税 ・総合課税 |
債券の利子 | 利子所得 | ・源泉分離課税 ・申告分離課税 |
国内FXの為替差益・スワップポイント | 雑所得 | 申告分離課税 |
不動産クラウドファンディングの分配金 | 雑所得 | 総合課税 |
不動産投資の家賃収入 | ・不動産所得 ・事業所得 |
総合課税 |
投資で確定申告が不要なケース
投資で得た利益は原則として確定申告が必要ですが、以下のように申告が不要なケースがあります。
特定口座、NISA口座で取引している人
株式や投資信託を源泉徴収ありの特定口座で売買している人は、運用益に課される税金の計算と納税を金融機関が代行してくれます。よって、確定申告の必要はありません。
また、NISA(少額投資非課税制度)で株式や投資信託の取引をしている人は、運用益に課税されません。そのため、確定申告は不要です。
給与所得以外の所得が20万円以下の人
会社員や公務員などの給与所得者で給与所得や退職所得以外の所得の合計が20万円以下の人は、確定申告が不要です。この場合、投資や副業などの給与所得以外の合計所得が20万円以下かどうかで判断します。
ただし、医療費控除や住宅ローン控除などを利用するために確定申告をする場合、給与所得以外の合計所得が20万円以下であっても申告しなければなりません。また、確定申告をしなかった場合、市区町村の役所に住民税の申告が必要になります。
申告不要でも確定申告をしたほうがよいケース
投資で運用益を得た場合でも、確定申告をしなくてもよいケースがあることを説明しました。しかし、申告不要でもあえて確定申告をしたほうが有利なケースもあります。
配当控除を受けるケース
株式の配当金や投資信託の分配金は*所得税・住民税(税率20.315%)が源泉徴収されます。しかし、総合課税を選択して、配当控除を受けることも可能です。ただし、高額所得者は源泉徴収される以上に税率が上がってしまい、不利になる可能性もあります。配当控除を受ける場合は、確定申告が必要です。
*2037年12月31日までは、通常の所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が上乗せされます
還付を受けられるケース
不動産クラウドファンディングなどの分配金は、受け取り時に所得税が源泉徴収(20.42%)されます。源泉徴収分より総合課税の所得税率が低い人は、確定申告すれば差額の還付を受けられます。
不動産クラウドファンディングで還付を受けられる可能性があるのは、所得税の税率が20%以下の人(課税所得金額694万9,000円以下)です。
たとえば、課税所得金額が310万円の給与所得者の、不動産クラウドファンディングの利益が10万円だったとします(所得は給与所得と不動産クラウドファンディングの雑所得のみ)。確定申告をしない場合の所得税は、以下のとおりです。
- 給与所得分:21万2,500円(310万円×10%-9万7,500円)
- クラウドファンディングの源泉徴収税額:2万420円(10万円×20.42%)
- 合計:23万2,920円(21万2,500円+2万420円)
一方、確定申告する場合、課税所得金額320万円(310万円+10万円)に対して、以下のように所得税がかかります。
- 所得税額:22万2,500円(320万円×10%-9万7,500円)
- 還付される税額:1万420円(23万2,920円-22万2,500円)
上記のような場合、確定申告すれば還付を受けられるわけです。
損益通算ができる人
損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することです。利益から損失を差し引くことで課税所得が少なくなり、かかる税金を抑えられます。損益通算には、所得の種類ごとにルールがあります。なお、NISA口座で発生した損失は、損益通算の対象外です。また、損益通算の適用を受けるには確定申告が必要です。
株や投資信託の売却損がある場合
株式や投資信託の売却損がある場合、配当金や分配金、売却益との損益通算が可能です。源泉徴収ありの特定口座で売買する人は、同じ口座内では損益通算が自動的に行われます。複数の口座間で損益通算をする場合、確定申告が必要です。
FXの損失がある場合
国内FX(外国為替証拠金取引)の損失は、先物取引に係る雑所得等に分類される他の所得との損益通算が認められています。複数のFX会社で利益と損失があるケースや、オプション取引などで利益のあるケースでは損益通算が可能です。
不動産クラウドファンディングの損失がある場合
不動産クラウドファンディングで損失が生じた場合、他の総合課税の雑所得と損益通算できます。総合課税の雑所得に該当するのは公的年金収入や副業の所得などです。ただし、不動産クラウドファンディングで損失が発生するケースは、あまりありません。反対に他の雑所得で損失が出た場合に不動産クラウドファンディングの利益から差し引けることを知っておきましょう。
賃貸経営で赤字がある場合
不動産所得は、家賃収入から固定資産税や借入金の利息などの必要経費を差し引いて求めます。不動産所得は赤字になるケースもあり、給与所得のような他の所得と損益通算ができます。
損失の繰越控除をする人
株式や投資信託の株式等譲渡所得やFXなどの先物取引に係る雑所得等は、同じ所得区分内での繰越控除が認められています。繰越控除とは損益通算をしても損失が残った場合に、翌年以降3年間、各年度の利益と相殺する制度です。たとえば、2023年に株取引で損益通算後に100万円の損失が残った場合に、2024年以降の利益と相殺できます。
3年間繰越控除の適用を受けるには、取引をしない年も確定申告をする必要があります。繰越控除は全ての所得で認められているわけでなく、総合課税の雑所得では不可です。よって、不動産クラウドファンディングでは繰越控除はできません。
投資の所得を確定申告する方法
確定申告は毎年2月16日から3月15日の間に申告書の提出・納税を行います。ここでは、投資の所得がある人の確定申告の流れを解説します。
所得額を確認する
会社員・公務員の人は、投資の利益があっても確定申告が不要なケースもあります。これまでの内容を踏まえ、確定申告をしなければならないか、申告不要でもしたほうがよいかを判断します。なお、投資の利益があって確定申告をしない(しなくてもよい)場合、住民税の申告を忘れないようにしましょう。
必要書類を準備する
確定申告に必要な書類には、以下のようなものがあります。
- 確定申告書一式(手書きの場合)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- 各種控除証明(医療費の領収書やふるさと納税の寄附金受領証明書など)
- 投資の利益を証明する書類
投資の利益を証明する書類は、投資の種類ごとに異なります。
株式・債券・投資信託など | 特定口座年間取引報告書 |
FX | 年間取引報告書(年間損益報告書) |
不動産クラウドファンディング | 支払調書(クラウドファンディング会社発行) |
不動産投資 | 不動産売買契約書、賃貸契約書、税金の納付通知書など |
申告書を作成、提出する
確定申告書は税務署や、国税庁のホームページからダウンロードできます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、所得などを入力すれば税額が自動的に計算されるのでおすすめです。
作成した申告書は、「税務署に持参」「郵送」「e-tax(電子申告)」のいずれかの方法で提出します。
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